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●村田真 Murata Makoto 美術ジャーナリスト

 

━━日本の貸画廊制度についてどのようにお考えでしょうか?

 貸画廊というのは一般論としても賛否両論あり、功罪がいろいろあると言われ続けながらも、何十年も存在し続けているわけで、存在している以上僕は肯定的にとらえたいと思っています。当然良い面悪い面があって、良い面というのは、金さえ払えば誰でも発表の場を確保できる事、悪い面というのは、ただ発表するだけで作品が売れるわけでもないし、あまり発展性が無い、閉鎖的であるというようなところだと思います。ある意味で戦後のいわゆる現代美術をつくってきたのは貸画廊だと思います。例えば、日本の現代美術の傾向でインスタレーションが多いのは貸画廊の結果だと思うし、どうせ売れないのだからその場で壊してしまえる、その場でしか成り立たない作品でも構わない、そういう発想でインスタレーションが出てきたのだろうと思います。作品の質を問う限りにおいてはそれで構わないし、ある意味では非常に純粋だと思う。ただ、逆に言えば純粋培養されすぎて、それが世の中に果たして通用するものなのかどうかは非常に、疑問があります。ともあれ、30年40年と貸画廊で育まれ、それを基盤に成り立ってきた日本の現代美術というものがある以上、やはりそれは肯定的にとらえていきたいと思います。ただそうした、一時的な作品、商品にならないような、流通できない ような作品が日本の現代美術のひとつの特徴だから、それはひょっとしたら海外にも通用していくものなのかもしれない。例えば川俣正はそれでやってるわけですよね。彼は貸画廊の空間を前提にして、ああいう作品を方法論として獲得して、それをどんどん外に拡大していったわけです。彼は美術館に行っても、海外に行っても基本的に同じことをやっている。スケールをどんどん大きくしていったわけですよ。あれは貸画廊でのインスタレーションを拡大していったものだと。とりあえず彼はそれで成功していると思います。つまり、悪い部分を逆手にとって「こういう方法論もとれるんだ」とアピールしていけるのではないか、と、そんな風に思うわけです。貸画廊が良くないという意見もあるけれど、「良くない」と言い始めるときりが無い。あまり後ろ向きに考えるより僕は前向きにとらえていきたいと思ってます(笑)

━━現状で、ここのこういう部分がこうなれば、もっと良くなるのではないか、みたいな部分というのはありますか?

 もちろんそれは画廊だけではなく、美術教育、美術館も全て(笑)アーティストもジャーナリズムも全てになってしまうけれども。それ以前の問題というか…。全てが 良い方向に行くためには、やはり「アートに対する考え方」というものから問わなければならないと思います。アートって何か半端者がやっているようなものと思われるでしょ。

━━(笑)

 例えば一人の非常に優れたアーティストが出て、その人が社会的にも大きな影響を及ぼすとなれば、アートに、アーティストに対する尊敬の念が湧くと思う。けれどそのようなアーティストが世に出るためにはまた、画廊や美術館というものがしっかりしていないと…

━━全体的な…

 

 

 
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