Home > 貸し画廊・1994 > 村田 真 > 3/3


 一枚の絵が、小さな国の国家予算より大きいわけです。そんなバカなって思うけれど、オランダはゴッホ一人を生んだだけで、経済にもはね返ってくるし100年くらいはやっていける。だからこそ今、国家をあげてアーティストに援助している。その援助の仕方は「100年に1人でいいからゴッホを出せば良い」という姿勢なわけです。毎年1万人に1万円ずつ援助して100年で100億円。100万人に援助しても、そのうち一人でもゴッホが出ればそれでペイできるという考え方で、それだけ未来に投資している。そこまで長いスパンでの投資が日本人に考えられるかどうかは、疑問に思わざるを得ない。日本は美術館制度でも、絵画作品そのものでも、何でも輸入してくる。自分で考え、自分でつ くるのではなく、みんな輸入して、それでもう自分の国にアートがあると言えてしまう。例えば美術館にしてもルーブル美術館なんかは革命によって市民が戦い、血を流して獲得したもの。闘争の中から確立したシステム、制度であり、だからこそ彼等は美術館のありがたさやアートの大切さを身に染みて分かっているんです。だけど日本の場合、むこうで確立したものをそのまま持ってくる。土壌に合う合わないは別にして油絵という形式を持ってきて、美術館持ってきて高い金出して作品買って、とりあえずアートがある文化的な街づくりができた、と言ってしまう。それはやはりアートの根源的な理念と最も相反する態度であると思うわけです。

 

 

 

 

 

 
Copyright© 2002 Masato Nakamura. All right reserved