2004年4月25日、朝日新聞より引用
『ブリの宿に救い、富山・氷見の「永芳閣」民事再生決定』
寒ブリで有名な富山県氷見市の老舗(しにせ)旅館がこの春、顧客や取引業者などの支援で再生への道を歩み始めた。いったん倒産したが、全国の顧客から支援金が寄せられ、民事再生法に基づく再生計画が確定した。担当弁護士は「全国的にも珍しいケース」と驚いている。
民事再生が決まったのは、1937年創業の料理旅館「永芳閣」。
富山を代表する老舗旅館で、ブリ大根やブリしゃぶ、ブリの胃袋などの料理で知られ、グルメ漫画で紹介されたこともある。しかし、バブル崩壊後の不況で国内旅行の需要減を受け、業績が低迷。昨年7月に東京地裁に民事再生法の適用を申し立て、倒産した。
ところが申し立て直後から地元有志や、債権者でもある取引先、旅館の従業員らが支援に動き、同9月に「支援する会」を結成。一口5万円の支援金を募り始めた。
地元有志が支援に動いた背景には、昨年亡くなった先代社長の伏脇毅さんが全国でセールスをして、ブリなどの氷見の魚が全国に知られるようになった経緯がある。
会に参加した取引先の鮮魚卸の一人は「観光地・氷見では永芳閣は横綱。横綱のいない相撲には人は来ない」と話す。
寒ブリの時期に毎年食べに来る常連客もおり、「旅館をなくすわけにはいかない」と顧客からも支援金が送られてきた。今年3月までに150人を超える人たちから、計7500万円が寄せられた。中には100万円単位で送金してきた人もいたという。
申し立ての代理人を務めた橋本正夫弁護士は「再生計画を立てる上で、支援する会の存在は大きかった」と振り返る。「投資で出資するケースはあっても、善意で集まることなど聞いたことがない。よそでまねをしようとしてもできないだろう」という。
再生申し立て後も営業は続けてきたが、予約は減って厳しい状況だった。再生計画が決まって、ようやく客足も戻ってきたという。
倒産当時の社長で、新生「永芳閣」の総支配人になる伏脇聡さん(46)は「一時は旅館として存在していいのか悩んだが、皆さんの期待に応えたい」と話している。
http://www.asahi.com/top/update/photonews/0425/TKY200404250121.html
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